Toru Hayano, Professor, Oberlin University
著者の早野透・桜美林大学教授(元朝日新聞コラムニスト)が執筆した動機などについて話し、記者の質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/12/r00025139/

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年1月号に掲載)

番記者がみた角栄一代記右傾化に警鐘

 かつての記者仲間や後輩記者を前に、「いつもは、そちらの方で記者会見を聞いていたのですが」と最初は居心地が悪そうだったが、話は興に乗り、著書の紹介から現在の政治分析にまで及んだ。
 朝日新聞で名物コラムを長く担当した早野氏の近著は、田中角栄元首相の詳細な一代記だ。
 戦後を代表する政治家とあって、いわゆる「角栄本」は優に100冊を超す。その中で、早野氏の角栄伝が注目されるのは、政治記者として磨いたバランス感覚と、番記者として「ベッタリ取材した」膨大な蓄積に裏打ちされているためだ。
 1974年、田中内閣の首相番となった日から葬儀の日まで、取材は20年間近くに及んだ。目白の角栄邸に日参し、ロッキード事件の被告でありながら、田中軍団を率いて政治を差配する姿を見つめ続けた。
 取材メモをまとめたファイルは30冊以上に達した。記者会見では「憲法なんて100年ぐらい変えなくてもいいんだよ」「(石原慎太郎氏は)実害はない。せいぜい障子を破るくらいだ」といった、番記者ならではの角栄の肉声も披露した。
 それでも「まだまだ取材不足」と謙遜するのは「番記者はちゃんとしたものを残さないといけない」という責任感の現れだろう。
 本を書き終えた今、「日本を平和で豊かにした戦後保守を、もう一度見直してみたい」と痛感する。
 衆院選の12月16日は、きしくも角栄の命日。自民党は圧勝し、政権復帰を果たした。だが、自民党政権を率いるのは、戦後政治を否定する安倍晋三氏だ。
 早野氏は「政治の右傾化」に警鐘を鳴らし、「角栄によみがえって欲しい」とまで口にした。穏健保守派の旗手が見あたらない政界への強い危機感からだ。「続編」を書く材料と意気込みは十分とお見受けした。

読売新聞論説委員 田中 隆之

Write A Comment

Pin