旬を迎えた伊勢エビを食い荒らす“海のギャング”に、悲鳴を上げる漁師たち。さらに、伝統の海女漁にも、壊滅的な被害が及んでいました。水産資源の宝庫と呼ばれる三重県の海で一体、何が起きているのでしょうか?次々起こっている“異変”を追跡しました。

■網ごと食いちぎる…“犯人”ウツボ

太平洋に面した、三重県志摩市。

伊勢エビ漁師の畑啓一さん(58)はここ数年、伊勢エビ漁が大きな被害を受けているといいます。

畑さん:「ここですね」「(Q.大きな穴が空いていますね?)こんなのは、(直すのに)3時間くらいかかる」

無残に破れた商売道具の網。伊勢エビ漁師たちは、連日その修復に追われていました。被害は、それだけではありません。

畑さん:「(伊勢)エビの稚魚を食べてしまったり」

伊勢エビが、網ごと食いちぎられてしまうというのです。その“犯人”は、漁を終えた網に掛かっていました。

魚を丸呑みする、見るからに狂暴そうな魚は、“海のギャング”ウツボです。

ウナギのような細長いからだが特徴の肉食魚。鋭い歯と大きな口で、魚やイセエビを捕食します。

その獰猛さを捉えた映像では、伊勢エビに3匹のウツボが群がり、捕食しています。

■駆除作戦も…漁師「海がおかしい」

ウツボの被害に悩まされている漁師たち。志摩市の伊勢エビの漁獲量は去年、およそ3万キロも減少しました。

危機感を覚えた伊勢エビ漁師たちは、ある行動を起こしました。

伊勢エビ漁師:「このごろ、ウツボが増えてきたので、(ウツボの)駆除」

およそ2年前から、漁の合間にウツボの駆除を行っているのです

畑さん:「ささやかな抵抗やわ。何もやらないでいるよりは」

捕獲の方法は、餌(えさ)となるイワシなどを仕掛けた筒状の罠を、海の中に沈めます

わずか15分後、餌のにおいにつられて、ウツボがやってきました。

その後も、次々と罠にかかるウツボ。やはり、相当な数が生息しているようです。

今回仕掛けた罠の数は、およそ100個。その中には、1つの罠に3匹もウツボが入ったものもありました。カメラにも、攻撃的な姿勢を見せます。

この日だけで、およそ200匹のウツボを捕獲しました。

畑さん:「不安は随分ありますよね。海がおかしい。海がだんだんおかしくなってきているのをすごく実感する」

■水温5℃上昇…専門家「海が砂漠化」

伊勢エビの減少はウツボだけが要因ではないと、専門家はいいます。

三重大学 水産実験所・松田浩一教授:「5年前に、黒潮という海流が流れているが、それが大蛇行が始まってしまって。それの影響で、志摩半島沿岸では、水温が非常に高くなっている」

「黒潮」は、海水の温度が高く、栄養素が少ない海流。およそ5年前から蛇行を続けることで、志摩半島の沿岸に黒潮が接近したため、冬場の海水温は、4度から5度も上昇しているといいます。

その影響で、以前は海藻が生い茂る豊かな漁場が、今ではほとんど海藻が生えていない、磯焼けという状態になっています。

海の生態系が変化し、大きく数を減らしている生き物がいる一方で、ウツボは…。

松田教授:「ウツボは、本来は温かい海を好む生き物なので。海の中では増えている(可能性がある)、少なくとも減っていることはない」

海藻がない“砂漠化状態”の海でも生きられるウツボ。捕獲する漁師の減少などもあり、相対的にその数を増やし、被害が拡大しているとみられています。

■「何も取れない」海女漁もピンチ

水産資源の宝庫と言われた三重の海の異変。伝統の海女さん漁にも、大きな影響を及ぼしていました。

海女歴13年、小海途静江さん(68)です。

静江さん:「(昔は)何十人もおった。(この地区では)今は4人だけ」

周辺の海では、海藻を餌とするアワビやサザエがほとんど取れなくなりました。

特にアワビは、黒潮の影響を受けた2年前から減少。今はほとんど壊滅状態だといいます。

今は禁漁の時期ですが、特別に許可を得て潜ってもらいました。

静江さん:「(前は)海藻生えて、良かったのにね。(今は)岩ばっかし。寂しいけど、仕方ない。天候のことやから」

静江さんの収入は10分の1に激減。現在は、真珠養殖のアルバイトをして生計を立てているといいます。

この日、30分以上潜って取れたのは、ウニが2つと売り物にならない小さなサザエが5つでした。

静江さん:「こんなんやったら、これで仕事(生活)はしていけない。食べていけないから、無理やろうね」

■緑豊かな海復活へ…水中の奮闘

黒潮の蛇行が終わり、海水温が下がらない限り、漁場は元には戻りません。

そんななか、危機的状況を少しでも改善するため、行動を起こしている人がいます。

地元でダイビング店を経営しているプロダイバーの清水憲夫さん(69)です。

清水さん:「液体を湿らせてある、カキ殻です。液体の成分がジワジワ海水ににじみ出て、周りに良い効果をもたらす」

清水さんは1年前から、海藻の胞子を岩などに着床しやすくする液体を染み込ませた、カキの殻を海底に置く活動をしています。

液体が周りの海藻の成長を促す効果があると考えられていて、緑豊かな海を復活させようとしているのです。

その効果は、驚くべきものでした。海藻がほとんどなかった場所が、わずか半年後には、岩場が見えないほどの海藻で埋め尽くされていました。

■海藻のじゅうたんが…再び消滅

ところが、今回、清水さんの活動に同行し、現在の海の様子を撮影してもらうと、そこには、予想もしなかった光景が広がっていました。

清水さんの手により、海藻が復活した場所へ行ってみると、なんと、ほとんどの海藻が再び消滅していたのです。

5カ月前の状況と比較すると、まるで別世界。これは、水温が上昇したことで、元々、この海域にはあまりいなかったブダイなどの魚による食害なのだといいます。

清水さん:「(海を)元通りに戻すことは、まず不可能だと思います。こういう実験によって、部分的に良い成果を得られるのであれば、少しでも磯焼けで壊滅的な状況になるのを食い止めていければ」

(「スーパーJチャンネル」2022年11月23日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

48 Comments

  1. ウツボより中国、韓国、北朝鮮の密漁を防がないとまずいぞ

  2. タコが減ったから、伊勢海老食べ始めてるんだよね、、基本は共存するはずなんだけどなぁ😅水族館のは餌が足らなすぎで起きた問題

  3. 徳島県南部では干したウツボを出荷してるみたいですが、味が良いのなら食材として流通する事も考えたらいいね

  4. ウツボって丸飲みタイプの捕食するんですね…

    小骨が多いらしいですが、どうにか一般的な食べ物にできないものでしょうか。

  5. ウツボ美味いぞ、甘辛く味付けした切り身を油で揚げると最高や。

  6. 昭和40年頃からアノ農薬が解禁になり湖沼河川の生態系が変わり海にも影響してる事は政府も掴んでる筈
    利権が絡んでるんだろう
    欧州では随分前に使用禁止になったが日本では相変わらず使われている
    もっと悪くなって行くと思われる

  7. 伊勢エビタダで食べ放題のウツボとかw
    人間よりいい生活してるわ

  8. タコが伊勢海老を捕食
    ウツボはタコを捕食するので結果的に伊勢海老を守る片利共生だと認識していました。
    水族館でもウツボと伊勢海老は同じ水槽で飼育しているのを見たことがありますし、同じ水槽で飼育すると伊勢海老は安心して長生きする。と聞いたことがあります。

    タコが少なくなりすぎて片利共生の関係が崩れてしまったのでしょうか?それとも、そもそも片利共生という認識が間違いだったのでしょうか?
    ご存じの方がいらしたら誰か教えて頂きたいです。

  9. でもグラフを見ると2012年からちょっとしか下ってない。
    普通に考えて最近の伊勢エビの豊漁に漁師達が馴れていただけだと思う。

    なので伊勢エビが豊漁だった3年前に伊勢エビを増やすために漁獲量の制限をする必要があったのではないだろうか?

    漁師って魚がいたらいただけ獲っちゃいますよねぇ〜?
    増やすという思考に辿り着けない。

  10. 水槽に入れた伊勢海老が脱皮直後のソフトシェルで笑った。
    偏向報道にもほどがある。

    そもそもウツボ程度の顎の力では大人のイセエビを食べれないのでは。

  11. 11月に海藻がなくて6月に海藻が生えているなんて当たり前のことです。
    来年の6月にはまた海藻生えてますよ😥
    確かに磯焼けは発生してますが検証するなら同じ時期に見ないと意味がないと思います。

  12. レジ袋無くしたから、海の潮流大蛇行収まりそうですね!流石俺達!

  13. ウツボって食べられないっけ? いつも思うんだけどこういうのは食用として乱獲することで減少させれば良いんじゃないのかな…寿司屋に大量に卸すとかさ。そんなにうまく行かないのかな…。

  14. ウツボの揚煮美味いのに。和歌山で昔っから売ってるやん。
    ウツボ悪者にしたいだけなんか?人ぁ潜ってへんのんか?
    ちゃんと調べ切った方がえぇんとちゃうか?

  15. いっそウツボも名産品になればいいのに。食べてみたい

  16. ウツボ駆除したら伊勢エビの天敵のタコを増やすだけじゃないの?
    ちょっと漁師なのに海のこと知らなすぎ。

  17. 海藻の生える時期を利用して磯やけの原因だの磯やけ対策の成果だののたまう人達多すぎ

  18. ウツボは水族館でも甲殻類と一緒にいる事があるしあんまり餌にする事はないんじゃないかなあ…?
    ウツボが減りすぎるとタコなど他の捕食者が増える可能性もあるし、そもそも伊勢エビの繁殖や成長を妨げる別の問題が起きてる可能性もある
    生態系はトータルバランスで考えないとね

  19. ウツボの生態上パニックに陥ったイセエビや網にかかったイセエビ以外は捕食しません。
    5年かけて成長するイセエビが5年間続く黒潮の蛇行により減少していると説明するのであれば理解できますが、ウツボを悪者だと誤認してしまうような報道の仕方はどうなのでしょうか?

  20. 漁業を守るために他の生物を駆除するのはどうかと思うわ
    かしこいやり方だと思えない

  21. 人間は、自分達に利の有るモノしか漁獲しない。
    それ故、生態系を破壊する。
    人間の取る量は尋常では無い。
    自然界で淘汰される量を遥かに上回る。
    海のせいにするのは間違っている。
    海の都合に人間が合わせるのだ。

  22. 磯焼けで貝が減ってタコがいなくなったんだろうな。ウツボの巣穴に伊勢海老は共生してタコから身を守ってるから。

  23. ウツボ漁を強化するんじゃなくてウツボ駆除なのね…何かに使えればいいのにね…

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