『どうする家康』成長した茶々役・白鳥玉季の底知れなさ 13歳にしてミステリアスな魅力放つ
大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)、第30回「新たなる覇者」では、豊臣秀吉(ムロツヨシ)が急速に台頭してきた。本能寺の変で討たれた織田信長(岡田准一)の代わりに誰がなるか。信長の長男・信忠の息子である幼い三法師を巡って、秀吉と市(北川景子)が対立する。秀吉は信長の次男・信勝(浜野謙太)と組み、市は柴田勝家(吉原光夫)と結婚し、信長の三男・信孝(吉田朋弘)を擁立する。市は、家康(松本潤)に自分側についてほしいと期待するも、彼は動けず、市は勝家と共に果てた。
母・市(北川景子)譲りのキツイ性格 秀吉(ムロツヨシ)もたじたじに!?
こうなったとき、まさに、どうする家康? で、第30回のクライマックスで「秀吉を討つ」と言っているが、はたして……。その前に家康は「信長を殺す」と言って、殺せず、「明智を討たねばなりませんな」と石川数正(松重豊)に言われたものの、秀吉に先を越されているのだ。むしろ、討てなかったことで、結果的に天下が手中に入るという感じさえする。
信長が死んでも彼の影響力は大きく、誰が信長を継ぐかというところに重きが置かれている。秀吉は、民衆出身と軽んじられないように、織田家と婚姻によって繋がろうとして市を狙っていたが、あっさり振られてしまった。「よかったよかった」と言いながら内心面白くない秀吉。それをじぃ~っと見ている茶々(白鳥玉季)の眼がこわかった。
誰が信長を継ぐか問題の鍵を握るのが茶々である。彼女はゆくゆく、秀吉の側室となり、淀と呼ばれ、世継ぎ・秀頼を産む。母・市が断固拒否したことを長女の茶々がやってしまうのである。市の最初の夫・浅井長政が小谷城の戦いで亡くなったとき、市は秀吉に保護されたものの、その手をきつくはねつけ、拒否の姿勢を見せた。今回、賤ヶ岳の合戦では、夫(勝家)と共に死に、絶対に秀吉に身を委ねることはなかった。今度こそ市を自分の妻に迎えようと思っていた秀吉の期待を鮮やかに裏切ったのだ。
でもそこで諦める秀吉ではない。今度は娘の茶々を狙う。茶々は市譲りのキツイ性格で、秀吉なんて相手にしていないかと思いきや、自ら、秀吉の手をとり、ぎゅっと握り、怪しく微笑む。平然とした仕草と表情がとてもこわく、図太い秀吉すら、なんとなくたじたじっとなっているように見えた。
市は考えていることがだいたい読める(というか言葉にして語ってしまう)素直なところがあるが、茶々は読めない。秀吉は「底知れない才覚が」あると勝家に言われているが、茶々にも「底知れない」企みがあるように見える。「母上の無念は茶々が晴らします。茶々が天下をとります」と母には宣言しているので、目的ははっきりしているのだが、どうやって天下をとるつもりなのか、彼女がどんな作戦を考えているかがわからない。そこが肝である。
『どうする家康』ノベライズ三巻では、市が茶々を「あの子は、そう信長よ」と言っているので、信長の魂が、死してなお、織田家の執念となって、秀吉を食い尽くすのだと想像させるのだが、ドラマでは、その台詞はない。ただただ、茶々の表情から、信長と市に似た――つまり織田家の激しい気性を受け継いで見えることを読み取るしかないのだ。だからこそ余計に、茶々は底知れない。だって、いくら、天下をとるためといっても、かなり年上だし、葛藤はないのだろうか。
そもそも本当に天下をとりたいのか。それとも家康への私怨なのかも謎である。母の市はどうやら家康に思いがあるのに、家康はいつも市を助けには来てくれない。小谷城の戦いのときも、今回の賤ヶ岳の合戦でも。幼い頃から家康を思い続けた母の健気な心を弄ぶ憎き家康をぶっ潰すために、秀吉の側室になる。それは市の想いを反転させて愛憎のようだ。
信長の野心と市の愛、2つの激しい想いが渦巻いて、今後、どういうふうに描かれるか気になる茶々。少女時代を演じるのが白鳥玉季と発表になったとき、あの美少女! とSNSは期待でざわついた。大きな瞳は知性を、くっきりした上唇の形は情感があって、黙っていても、うるさすぎず、おとなしすぎない、ほどよく豊かな、想像が膨らむ顔立ちは、茶々の、言葉少なく、何を考えているかわからないところにぴったり。過剰に明るく愛想を振りまかなくても、むしろ、少しばかりぶすっとしているくらいが、気になって良い。そんなミステリアスな雰囲気が13歳にしてすでに仕上がっているところが底知れない。
朝ドラ『とと姉ちゃん』『エール』にも出演していた白鳥玉季
白鳥玉季とNHKのドラマの関連を振り返ると、6歳のとき、朝ドラ『とと姉ちゃん』(16年)に出演している。ヒロイン常子(高畑充希)の初恋の相手・星野(坂口健太郎)の娘役で、愛くるしさを振りまいた。10歳のとき、『エール』(20年)の主人公・裕一(窪田正孝)の幼少期の学友役で登場した。そのときは、なかなかきつい性格で、主人公をのしてしまう役柄。成長後は堀田真由に代わったが、そのときも裕一を振り回していた。勝ち気で、男性顔負けの活躍をするという役柄は、今回の茶々とも重なりそう。ただ、13歳の白鳥が淀まで演じることはないだろう。このあと、淀を演じるのは誰なのか。北川景子の2役説もささやかれているが……。
白鳥はNHKの朝ドラ、大河と出演するごとに、着々と役割の重要性が増しているので、いつかは朝ドラヒロインの可能性もあるかもしれないと期待したい。
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