陰陽師0
監督/佐藤 嗣麻子(さとう しまこ
アンフェアシリーズ(11、15)で知られる演出家で映画監督
出演
山﨑賢人
染谷将太
奈緒
安藤政信
村上虹郎(むらかみ にじろう)
板垣李光人
國村隼
北村一輝(きたむら かずき)
小林薫
夢枕獏の原作の映画化というところだが おそらく 原作を読まなくても 陰陽師 というワードで興味を持つ人はなからずいるだろうと思う
最近では「呪術廻戦」で「呪術」というワードを知った人も多いと思うが「陰陽師」を題材にした作品は過去にもいろいろあり、野村萬斎主演の映画や稲垣吾郎、市川染五郎、佐々木蔵之介らがそれぞれ主演のドラマなどがあるが、今回は完全なオリジナルストーリーであり、安倍晴明が陰陽師として活躍する前日譚ともいえる。
陰陽師の使う呪術や式神を超常的な演出にしたりすることが多かったいままでの作品が多かったが、今回は主人公の安倍晴明はリアリストであり、いままでの晴明のイメージとはかなり違うかもしれない。この映画は 佐藤監督 らしい リアリティと ファンタジーをうまく 掛け合わせ 陰陽師が使う呪術などにたいして新たなアプローチで挑んでいるともいえる。
ネタバレになるので全てを語るわけにはいかないが CGを使った呪術の演出に関してはとても素晴らしいものだったことは間違いない。とはいえ安倍晴明が持つ陰陽師のスキルの表現はかなり抑えめになっている
山崎賢人の演じる安倍晴明のキャラクター性は出世欲もなければ 他人に興味を持たないという形になっている。
彼がなぜそういう性格なのか…は最後まで言葉で明確にしないものの、一言のセリフですべて完結するだけの説得力を持たせている。
また山崎賢人の演技に関しては「言うことはなし」
キングダムのような熱血・猪突猛進キャラクターと違ってどこまでも冷静。そして とことんリアリスト。
さらに体つきも、肉体派ではない雰囲気を持つ体のラインになっており、そうとう役作りに関しては 力を込めて作り込んだように見受けられる。
染谷将太の役どころも 感情の起伏がわかりやすいキャラクター。逆にうと演技力が求められるがさすが染谷将太。演技力が抜群なので安心してみられる。
どこか頼りない感じがするが、安倍晴明のバディとして見せ場もしっかりと見せてくれる。
そして奈緒もいい演技
好きな人への思いがあふれる笑顔、切なる願いを語るシーンの奈緒ちゃんはさすが。
テレビドラマであり 映画化にもなった「あなたの番です」でも見せてくれた驚異的な演技力の高さは今作でも健在
純真無垢で思い人に心を寄せる キャラクターを見事に演じており 感情を一気に 爆発させて吐露するシーンに関しては非常に見事な演技を見せてくれる
そして若手ながら輝いていたのが 板垣李光人。 まだまだ少年の帝でありながらも不敵で権威者である雰囲気を上手く演じている。「帝」である立場を良くも悪くも上手に活用している雰囲気をうまく演じきっている。
登場シーンがとても少ないにもかかわらず 非常に心象に残るキャラクターだった。
あれだけうまい俳優が周りにいながらもこれだけ心象に残ったのは、板垣李光人の演技の巧さだといえるだろう。
他にも北村一輝や 國村隼 など 脇役ながらも実力のある俳優が出演しており 演技に関しては超一線級の方々が出演していることもあって俳優陣の演技力は見事な作品とも言える。
物語 そのものは 後半のクライマックスまでかなり 抑えめ。そこに至るまではどちらかというとミステリー映画とも言える。
陰陽師でありながらも謎解きが主な展開になっていく。
冒頭の 津田健次郎のナレーションで時代背景などの説明が丁寧に行われるので、原作を読んでなくても理解できるようになっている。
さらに「陰陽師」の世界観で大切な様々な専門用語だがキーとなる言葉や現代とは違う読み方をする言葉については 冒頭で丁寧すぎるとも言える説明がなされている。
またセリフの言葉遣いなどでツッコミを入れられないようにするために一言コメントを入れているところなどは、言葉遣いをネタに批評する人へのアンチテーゼかもしれない。極論、一部映画マニアの重箱のスミをつつく体質の人に対して一言 苦言を呈しているとも言えるかもしれない
呪術に関するシーンは コンピューターグラフィックスの演出に「ゴジラ-1」でもおなじみ「白組」が参加しており、様々な幻想的な動物が出てくるシーンや 人の心の揺れ動きを魅せるシーンで鮮明で色鮮やかなCGで描かれていて、見ている側が一気にその世界に引き込まれそうになる美しさに仕上がっている。
その一方で呪術そのものの演出は非常に抑えめ。
クライマックスに至るまでは ほぼチラ見せする程度なので、映画全体で見ると若干盛り上げにかけるところはあるのかもしれない。
シナリオ全体を覆う 謎解き要素に関しては 佐藤 嗣麻子(さとう しまこ)の脚本らしい 緻密に練り込まれたものになっている。
とはいえ配役/キャスティングなどで ある程度 読めるところはあるものの、見ていて引き込まれて展開を伺い知る限り ドキドキする人も多数いるように思える それだけ 全体の面白さは整っているとも言える
映画タイトルにもある通り まさに「陰陽師0」 という安倍晴明が大活躍する物語の前日譚といえる。
もしも新たに展開されるとなったらもっと派手な呪術シーンが増えると思うと容易に想像できるのだが、そうなるかどうかは今回の作品の観客の入り数次第?
1本の映画として大きなスクリーンで見るだけの価値はある 作品と仕上がっているのでぜひ劇場で見ていただきたい。
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素晴らしいレビューです、既視感のない新しい晴明が観れ映像が美しくストーリーも深く見所満載でとても面白かったです、続編観たいです、帝付きになった晴明を観たい